「オーファンズ-孤児たち-」豆知識のコーナー

「オーファンズ-孤児たち-」

《生みの親・ライル・ケスラー氏とは?》

この心に迫るお芝居をこの世に生み出したのは戯曲家、演出家、プロデューサー、
そしてメンタルセラピスト、アクターズスタジオ出身の俳優としてのキャリアも持つ、
ライル=ケスラー氏です。
黒人男性と白人の若者の愛の交流を描いた感動的な映画「聖者の眠る街」
(主演:マット・ディロン、1993年)等もケスラー氏の作品です。
またケスラー氏は奥様であるマーガレットさんと一緒に1969年より
メンタルに悩む方々と一緒にお芝居を使ってその心を癒していくという
"The Imagination Workshop"を開催しており、セラピストとしても活躍されています。
ケスラー氏のそのような活動の根底にある「愛」は遺憾なく「オーファンズ」はじめ
彼の描く作品の中に現れているといっても良いでしょう。
人の心が抱える痛み、苦しみ、そしてそこに触れるやさしさの力、
そして自分自身が自分を見つめる勇気…。その先にあるそれぞれの答え。
「傷ついた心が愛によって癒されていく」
オーファンズにはその愛が泉のごとくあふれています。

オーファンズは1983年8月31日ロサンジェルスで初演されました。
翻訳家の吉田美枝さんが当時の公演をごらんになった方から伺った当時の舞台は、
それは心に迫り来る壮絶なものであったのだそうです。
その後シカゴを拠点とするSteppenwolf Theratre Companyにより、その作品を不動のものとしました。
また、翌1986年3月11日からロンドンでも上演。
ハロルド役はあの名優アルバート=フィニー。彼はこの作品で主演男優賞も獲得しました。
さらに翌年1987年には、アラン・J・パクラ監督によって、映画化されました。


《吉田美枝さんの心に迫る日本語訳の世界》

吉田美枝さんはこの「オーファンズ」をはじめ、「パック・オブ・ライズ」や
「ブラッド・ブラザーズ」など多くの作品を訳されています。
また現在はご本名の方で東宝ミュージカルの有名作品の演出アシスタントや
演技などを教えていらっしゃる素晴らしい芸術家であられます。
じっくりとお話を伺ってみると心深く情にあふれた方。
その心の奥の深い感性がどの作品にも貫かれています。
吉田作品に共通して言えるのは書かれている文章が「話し言葉」であること。
多くの脚本は俳優にとって「しゃべる」事が難しいものも多い中、
特筆すべきことのように思います。そのくらい素晴らしい文章。
秘密を伺ってみると、まず吉田さん自身が何よりも「お芝居を愛していること」
そして、翻訳家である前に「日本語」をしっかりと理解して愛している人であること。
それらがこのオーファンズの世界をいっそう私たちの心に届けてくれます。
ぜひ、お芝居をご覧になって、その世界に触れてください。



《作品の中に隠されている差別階級》


このお芝居の登場人物ハロルドはユダヤ人であり、孤児の兄弟トリート&フィリップがアイルランド系の白人であることを示唆する部分がこの作品にはあるのだとアメリカで演劇を学んでいるアメリカ人の方に伺うことが出来ました。
移民の多い多種民族の住む国アメリカ。アメリカ人にとっては「人種の違い」は避けて通れません。
誰が何系であるのということは、かなり重要で深い意味をもっているのだそうです。
この辺りは「ウエストサイド・ストーリー」などでも良く描かれています。
ユダヤ人といえば差別の対象とも言えるべき民族として描かれることが多いですね。
アイルランド系とは遅れてきた移民でありカトリック教徒という事から、
アメリカではイタリア系と並び1級下の白人の扱いを受けていたのだとか。

《デッドエンド・キッド》

「オーファンズ」のセリフの中には、"Dead End Kid"という言葉が出てきます。
デッド・エンド自体は「行き止まり」という意味があります。
そしてこのデッドエンド・キッド、これには「追い詰められた子どもたち」、
「死の淵に生きる子ども達」といったニュアンスが含まれています。
1930年代映画全盛期のアメリカでは「孤児」を主人公にしたシリーズが多く造られました。
その作品の中の多くの孤児たちはアイルランド系とされています。
トリートをデッドエンド・キッドと呼び、自身も孤児であったハロルドの中に
「デッドエンド・キッド」はどんな意味を持って存在しているのでしょうか?
ぜひともお芝居をご覧になってハロルドの心を覗いてみてください。


《スーパーヒーロー!エロール・フリン》

「オーファンズ」ではフィリップが気に入っている俳優Errol Flynn(1909~1959)の名前が出てきます。
エロール・フリンは1935年の「海賊ブラッド」で一躍人気者に、
そして翌年の「進め龍騎隊」(1936年)でスターになりました。
この作品がオーファンズのなかでフィリップとトリートがテレビでみている作品です。
内容はクリミア戦争が舞台のイギリスの壮絶な歴史活劇です。
有名作品に名作「陽はまた昇る」(1937年)「自由の大地」(1958年)があります。
往年のアメリカクラシック映画大スターの一人。
「ハンサムな野郎じゃねぇか?」
トリートの言うとおり、甘いマスクにハードなアクション。イケてます(^^)


《アメリカンな食べ物たち》

お芝居のなかでフィリップが大好きなのはマヨネーズ。
「ヘルマンズ・リアルマヨネーズ」は今でも通販や輸入品を扱う店ではお目にかかることが出来ます。
青いラベルにリアルマヨネーズの文字。もちろんガラスのビン入りです。

次は彼らが毎日食べてるツナサンドにはさまれている「スターキスト・ツナ」の缶詰。
青いイルカちゃんみたいな可愛いマグロのキャラクター、チャーリー・ツナでおなじみ。

けれどもこれらは決して価格の高いものでなく、どちらかといえばかなり低価格商品。
低所得層の人たちが多く使用しています。
つまり、これらを自慢するフィリップやトリートは世間での価値観をあまり知らず、
またとても貧しい暮らしをしているとも言えるのでしょう。

《縄抜け術師 フーディニ》

ハロルドが披露する「縄抜け」の技。そこで出てくるのが「フーディニー」

ハンガリー生まれ。本名エーリッヒ(エリック)・ワイス。ユダヤ人。
子供時代に両親と共にアメリカに移住。20世紀前半、マジックの世界だけでなくボードビル全体を見渡しても、圧倒的な人気があったマジシャンでした。
最初はマジックを中心にしていましたが、途中からは「脱出術」(エスケープ)を見せる芸を売り物にしていました。
「脱出術」というのは、手錠をかけられたり、ロープや鎖で体を縛られ、
暴れる人を取り押さえるときに使う拘束衣などを着せられても、
そこから抜け出して見せる技術です。脱出不可能と言われている刑務所の独房に入り、
そこから抜け出したりすることを見せ、新聞や雑誌が取り上げてくれるのをうまく利用していました。
マジックショーの宣伝に、このような手法を使ったのはフーディーニが初めてでしょう。
これが効いて、ショーはいつも大変な人気を博していました。

ちなみに調べたところライル・ケスラー氏の経歴には「鎖抜け師」というのがあるそうです(笑)
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by officeyumenomachi | 2007-12-12 22:17 | オーファンズ豆知識コーナー
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